東京大学ディズニーサークルオフィシャルブログ

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【ネタバレあり】『ミラベルと魔法だらけの家』レポ&考察

【ネタバレありなので注意】

目次

  1. あらすじ
  2. 曲について
    1. "The Family Madrigal"
    2. "We Don't Talk About Bruno"
  3. 【ネタバレ注意】ストーリーについて
    1. 全体の構成 / プロット
    2. 魔法
    3. 家族愛

 

1. あらすじ

「“魔法だらけの家”へ、ようこそ──」

魔法の力に包まれた、不思議な家に暮らすマドリガル家。 家族全員が家から与えられた“魔法のギフト(才能)”を持つ中で、少女ミラベルだけ何の魔法も使えなかった。

ある日、彼女は家に大きな”亀裂”があることに気づく──それは世界から魔法の力が失われていく前兆だった。 残された希望は、魔法のギフトを持たないミラベルただひとり。 なぜ、彼女だけ魔法が使えないのか?

そして、魔法だらけの家に隠された驚くべき秘密とは…?

引用:ディズニー公式HP

2. 曲について(少しネタバレあり)

曲がとても魅力的なので, 少し紹介しておきます.

 

ちなみに作曲には「モアナと伝説の海」と同じ人が関わっていたりします...

 

2-1. "The Family Madrigal"

 

邦題は「ふしぎなマドリガル家」.

物語の冒頭から流れる曲です.

 

歌詞を見ていただければ分かるように, 主人公ミラベルが「ふしぎなマドリガル一家」を近所の子供達に紹介していく内容で, 視聴者が大量の登場人物を把握するための曲です.

 

もちろん, 本当に重要なのはそんなに多くない(指折り程度未満)のですが, この曲を聴けばだいぶストーリーを追うのが楽になります.

 

例えば, 「美女と野獣」では,

物語のはじめに語り手が王子が野獣になった状況説明をするところから入り,

「朝の風景」でベルが小さな町でどのような立場かを説明しますが, "The Family Madrigal" はそれと同様の役割があります. 「くまのプーさん」の最初の曲もそんな感じの曲ですね.

 

曲調もリズミカルでカッコイイです. 物語の始まりにふさわしい曲だと思います.

 

2-2. "We Don't Talk About Bruno"

 

邦題は「秘密のブルーノ」です.

 

曲の主題としては, マドリガル一家及その周辺住人から避けられている, マドリガル一家の「ブルーノ」に関する曲です.

 

本作には明確な悪役は存在しないのですが, この曲が唯一(少しだけ)ダークな雰囲気を持った曲です.

 

メロディラインが複雑ではないと思いますが, 複数のキャラクターによる掛け合いが多く, 一度映画館で聴いた時は誰が何を言っているか処理しきれなかったです. そこで一度イヤホンで聴き直したのですが,

 

この曲はイヤホン向きです.

 

左右から全然違う音が入ってくるので, 最後のあたりは特にサイケデリックです.

 

3. 【ネタバレ注意】ストーリーについて

 

3-1. 全体の構成 / プロット

*時系列プロット

  1. アルマおばあちゃん(若い時), 3人の子供に恵まれる.
  2. "侵略者"により, 夫を失くす→魔法の家, 誕生.
  3. 魔法一家の繁栄. 家族みんな魔法が使える.
  4. ブルーノおじさん, 不吉な未来を予言し孤立.
  5. 魔法一家の魔法が弱まる. (隠蔽可能な程度)
  6. ミラベル(主人公), 誕生.
  7. ミラベル, 幼少期になぜか魔法がもらえない孤立.
  8. ミラベル, 自分より若い家族がギフトを授かる儀式の時, 家の異変に気づく.
  9. 姉妹ルイーサの問題解決.
  10. ブルーノおじさんの部屋に, 家の崩壊を予言した石板を発見. (ミラベルが描かれていた)
  11. ブルーノおじさん発見→再び未来を予言してもらう.
  12. 予言の指示に, 姉妹イサベラとの仲直りが書いてあり, イサベラ問題解決.
  13. 石板の内容で, アルマおばあちゃんに責められる.
  14. 家, 崩壊(物理)
  15. アルマおばあちゃんの過去(番号1~2)を知る.
  16. 仲直りし, 近隣住民達と家を再建.
  17. 魔法が復活.

 

この映画は, ポケモンドラクエなどのRPG(ロールプレイングゲーム) に近いシナリオ構成です.

 

つまり, 個々のシナリオが独立しており, 時系列に沿って順番に解決するということです.

 

例えば, ミステリーなど(わかりやすいのは名探偵コナンの映画)では,

すでにある問題を解決する前に, 新たな事件が連続して発生し, 後になって複雑に絡み合って非常に重要なファクターになる...

などがありますが, 本作はそうではありません.

 

専用曲が用意された姉妹の問題解決に関しては特に他のパートと独立しており, 前後のストーリーには基本, 関わりません. 登場しないという意味ではなく, 物語を大きくは動かさないという意味です.

 

問題解決もその一曲でキッパリ完了しています.

 

中盤はブルーノとの対話がありますが, これも親交を深めるのにシーンを跨ぐわけではなく, 一発で仲良くなります. その後は未来予知によりミラベルを助けてくれました. (0 or 1で関係がサクッと切り替わります.)

 

終盤は主にアルマおばあちゃんとミラベルとの対話ですが, その時にはブルーノ含め他の家族は退場します. (僅かにお母さんが絡みますが)

ブルーノに関しては非常にわかりやすく, アルマおばあちゃんとミラベルが仲直りした直後を狙って(?)再登場してくれます.

 

以上のように本作は構成が非常にわかりやすく, サンドボックス化されています.

 

3-2. 魔法

 

この物語は, 魔法が使えなくなる話です.

 

特にミラベルは, 最初から最後まで家についている魔法の機能以外使えません.

 

なので, 例えば「アナと雪の女王」, 「美女と野獣」のように, 魔法/呪いを制御する形式の話ではありません.

 

一方で, 「シンデレラ」や「アラジン」のように, 強烈な魔法によって力技で問題を解決する話でもないです.

 

最終的には魔法を取り戻すし, エフェクト的に魔法が出ることは多いんですが, 解決のプロセスとしてみれば魔法によって話を進めることは, 未来予知程度(あと地獄耳も?)で, それもミラベルにとってあまり参考になっていないです.

 

主人公が魔法を使えないと, 魔法を羨ましがる気持ちが視聴者, つまり僕達と重なって, 感情移入しやすいです.

 

3-3. 家族愛

 

ミラベルとブルーノは, 理由は違うながらも, 二人とも家族から敬遠されていました.

前者は「ギフト」がないことによって, 後者は「ギフト」があること(未来予知)によって敬遠されていました.

 

一方で, 家族の他の者たちが結束していたかというと, 完全にそうではなく, それぞれが魔法によって人々の役に立たなければならないというプレッシャーを抱えていたようです. (実際, その悩みは隠されていた)

 

家族のみんなが誇りを大切にしていたのですが, それがかえって家族を蝕んでいたようです.

 

ですが一家は最後に魔法なしでも結束することに成功しました.

 

家族とは, 商業や研究, 政治を目的とした合理的システムとは異なり, 血縁による, 外圧的で,  "天から授かった"結束なのかな? と勝手に思います.

 

もちろん, 血縁がなくても, ともに助け合うことも可能で, 実際マドリガルハウスの再建には周りの人々に助けてもらっていました.

 

しかし, この映画では, あくまでも"家族"の特別性は最後まで残り続けたように感じました.

 

...... 血縁というのは, 何があっても消えないという意味で, 最後の拠り所, 救いであり, かつ呪いであるような気がしますね.

 

一般的に言えば, いわゆる名家や王族, 貴族に生まれた人間にとっては特に深刻な問題でした.

 

(本作でもありましたが)政略結婚などによって子孫を繁栄させることが重要視され, 家族の誇りを汚すことは許されません. 

 

ミラベルは, もしマドリガル一家に生まれていなければ...

 

本編を見ればわかるように, 聞き上手で, 一般人として十分幸せだった(はず)なわけです.

 

実際, 近隣住民は魔法が使えずとも幸せに暮らしており, 「なんで自分は魔法が使えないのか」なんて悩むことはあまりないでしょう.

 

しかし, マドリガル一家に生まれたことにより, "唯一魔法が使えない魔法一家の娘"として生き続けることを強いられています.

 

これは物語が終了したのちも消えない呪いです.

 

元々魔法を持っていないミラベル以外の家族の魔法は復活したわけですから.

 

ミラベルは, 他の家族だけ魔法が使えるという現実を, 永遠に見せつけられることになります.

 

その意味では, 本作はある意味ではバッドエンド...???なのかもしれません.

 

written by Mii